漆黒の闇の中に、金色の闇が漂う。
延々と広がる黒い闇と、人の形をした金色の闇。
二つの闇を隔てるのは、無数に浮かぶ紅い光点。
キィ・・・キィ・・・
金属に爪を立てたような甲高い音を立てて飛び回る紅い光点たちがふと静まった。
「・・・おいき。そして吸い尽くし、喰らい尽くしなさい」
響く声は鈴の音色に等しい。
「ここに足を踏み入れていいのは私だけ・・・この膨大な≪力≫を手に入れるのは・・・」
沈黙し、待つ。
既に一度、ここには侵入者が訪れている。その時も同様に命じ、数分もせずに侵入者の男女が息絶えたと言う報告があった。
だが。
「これは・・・」
数十分が過ぎてももたらされない報告にいらだっていた声が驚愕に彩られる。
キ・・・キィ・・・
戻ってきた紅光はたった一つ。しかもその輝きは今にも途絶えそうに明滅していた。
「・・・!あの子達が・・・!?」
ついに消えた赤い光を闇へと還して声はしばし途絶える。
そして数秒の逡巡の後に、
「必要なのは彼女だけ・・・ほかの子達には・・・死んでもらう」
呟き、気配が消える。
目指すそこに居る、4人の男女を殺すために。
それを躊躇している自分に、気づかぬままに。
第二話 序幕 「紅」 閉幕