オスカー家の晩さん会〜3〜



 

今日のオスカー様は、気合いが違います。なんせ、今日は休前日。
そうです。例のアレ。

 

オスカー様の家の休み前晩さん会は、あれからほとんど毎週行われてます。入れ替わり立ち替わり、組み合わせもそれぞれ変えて。
ほんと、守護聖様というものも閑人・・・いいえ、風流な方たちが多いです(笑)
なんせ8人の敵です。強さを司る炎の守護聖さまだってなかなか太刀打ちできません。

 

でも、今日のオスカー様は違います。根回しが完璧です。
『ジュリアス様とクラヴィス様は出張。ルヴァには辺境の珍しい出土品と書物。お子さま達にはそれを手伝わせ、オリヴィエとリュミエールのやつには昨日おもいっきり煙草の灰入り酒を飲ませたから・・・」
うん、完璧です(笑)
これで、晴れて家族団らん水入らず。 お嬢ちゃんたちの愛は一人占めだぜ!の気合いもあらたに家路につくのでした。

だが。

そうは問屋が卸しません。

「ただいま。今帰ったぜ」
オスカー様が扉をあけると、奥から愛娘が飛んできます。
「パパ、お帰りなさい!」
豊かな紅金色の髪をなびかせ、懐に飛び込んでくるアン・ディアナ。
「俺のお嬢ちゃん、いい子にしてたかい?」
そのまま抱き上げて、ただいまのキスをしてもらう。
こんな何でもないことが今日はやけに嬉しかったりします。

でも。

「? アン、ママはどうした?」
そうです。いつも娘と一緒に出迎えてくれる愛妻の姿がありません。いつもならここでオスカー様の取り合い(笑)が起こるのに。
「ママ? おきゃくさまのあいてをしてる」
「客?」
(だれだろう? あいつらは絶対これない筈・・・。)
何です、その自信は。

「あら、おかえりなさい」
オスカー様を待っていたのは・・・。
「!!! へっ、へっ、陛下っ?!」
「あら、今は勤務外。単なる奥様のお友達のロザリアよ」
にっこり笑うその人はまぎれもなく現女王・ロザリア陛下に他なりませんでした。
「ごめんなさい、オスカー様。お出迎えもせずに・・・」
「私の事は気にしないで、お帰りなさいのキスでもしたら?」
「やだ、ロザリア!」
真っ赤になる妻は滅茶苦茶可愛くて。
陛下や娘がいなかったら、即押し倒しもの(爆笑)でしたが。

「どうして、陛下が」
そうです。仮にも(?)この世界の最重要人物。そんな簡単に出て来れる訳ないはずです。それも王立府警備隊総責任者の炎の守護聖にも知らせずに。
「あら、親友の家に遊びに来てはいけないのかしら?」
「いえ、そうではなくて・・・それにお一人でなんて危ないじゃないですか」
「私がお誘いしたんです。ロザリアが『一人で食べる夕御飯て味気ないわ』っていうから」
またもや妻の裏切り!(笑)
「有能なる補佐官殿と一緒に来たのよ。危険なんかあるわけないじゃない。そんなことすれば炎の守護聖殿が黙ってないだろうしね♪」
ニコニコ笑う女王陛下の膝にアン・ディアナがダイビングする。
「ろざりあ様、さっきのお話の続きして?」
「はいはい、え〜と、どこまで話したのかしら?」
「大陸におうちができたとこ」
「そうそう、それでね・・・」

話は盛り上がってます。女王試験の時の話。
だけど。
その女の子の話にオスカー様ははいれなくって。
しかたなく一人でブランディなどをなめてました。 『こんなはずじゃ・・・』という思いをかかえて。

「でも、よくジュリアス様がお許しになりましたね」
妻が料理の出来具合いを見に席を外した時に、オスカー様は聞いてみました。まあ、居ないので黙ってきたと言うのも考えられますが、それはそれで上司が帰ってきてからオスカー様が怒られそうだったからです。
その答えは。(みなさん、予想がついてますね)
「あら、ジュリアスが勧めてくれたのよ。それにクラヴィスも」
「!」
「自分達が居なくては女王宮の警備に不安が残るから、いっそのこと警備総責任者のところに行けばいいって」
更に一言。
「一人占めになんかさせないわよ。」
呆然自失とするオスカー様に聞こえる妻の声。
「ロザリア〜、今日は泊まっていきなさいよ〜♪ 久しぶりに一晩中おしゃべりしましょ」

ああ、オスカー様にとっての家族団らんは何時訪れるのでしょうね。

おしまい♪




おまけ


ヴィクトール様は苦悩してました。
原因は・・・はい、それです。

子供のたわごと、直ぐに飽きるだろうと思ってたジュニアの添い寝はもう10日間も続いてました。
さすが(元)精神の教官の御子息。忍耐力はそんじょそこらの四歳児とは比べ物になりません。ましてや大好きな母親と寝れるんですもの。これは飽きるだろうと思う方が負けです。
もちろんその間は、おあずけ。(なにがとは、あえていいませんが)
逆にヴィクトール様の忍耐力の方が我慢の限界に達しそうになってました。

まずい、このままじゃ。

いきなり仕事を放り出して、アンジェリークを攫いに来てしまうかもしれません(笑)
他の人にすれば犯罪になってしまう行為です。
それにそんなことをしたら、アンジェリークが怒って口をきいてくれなくなります。

考えぬいた末。

ヴィクトール様はジュニアを自分の書斎に呼びました。
「なあに、父様」
自分によく似た琥珀色の正義感溢れるまっすぐな瞳。
ヴィク様、今、息子の目をみれますか?(笑)
でも、このままじゃ、自分がおかしくなってしまいそうです。

「なあ、ジュニア。父さんが悪かった。
頼むから、父さんと母様ふたりだけで寝かせてくれ。子供がいなきゃ仲良くなれないなんて変だろ?
・・・もう二度と母様をなかせるようなことはしないから」
「ほんとに?」
「ああ、男と男の約束だ」
「うん! おとことおとこのやくそく、だね!」
・・・ヴィクトール様、ずるい。
この位の年の子ってただでさえ大人扱いされるのが大好きなのに、そんな『男と男の約束』なんてフレーズつかっちゃ、否とはいえないじゃないですか。
案の定、ジュニアはころっと態度を変え、ヴィクトール様と指切りなんかして御満悦。

でも、ヴィクトール様?
愛妻を『鳴かせ』ない約束なんて守れるんですか?

その後、ヴィクトール様のしたこととは。
普段なら死んでもしないこと。
それは。

将軍の権利を思う存分使い、主寝室を一日で完全防音にしたこと(爆笑)

それからしばらく、ジュニアは父様とふたりだけで朝食を食べることとなりましたとさ。





あとがき?

うにゅ〜、なんてまとまりのない話・・・。とりあえずJr君がパパとふたり朝食になったのはママが起きられなかったからです・・・っていうのは蛇足?(笑)
ちなみにJr.君の正式名は『ヴィクトール・ガーテ・Jr.』です。(って、わかってるって?)
もっと精進しまっす(冷汗)



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