劇場版 STAMPEDE 1





 
!」
 ローの声が響くと同時に、「行け!」という声がペンギンからかかる。
 悠長に考える時間などない。
「来い!」
 再度かかったローの声に、は彼のテリトリーから走り出た。

 ――ROOM。

 低い声を聞きながら、ペンギンたちを振り返る。
「必ず、キャプテンを連れて帰ってこいよ!」
「こっちは任せろ!」
 ペンギンとシャチの声に、は大きく頷く。

 ――シャンブルズ!

 ローと以外のハートの海賊団の船員たちは、ペンギンやシャチを含め、ローの能力で船へと帰艦させた。
 残るは、二人。
 どちらも戦意を失っていないが、やっとのことで戦線離脱したため、何とかして戦況を自分たちへと引き寄せなければならない。
 圧倒的な力に、二人で立ち向かうことができるのか。――否、立ち向かわなくてはならない。










 追手に追いかけられているなか、ローとは近くを水路が通っている路地へと入り込む。少しは時間稼ぎができるはずだ。
「ロー、あれ!」
 が指さす方向に見える、見慣れた船――サウザンド・サニー号。
「麦わら屋!?」
「あぁーーー! 見つけたぞ、トラファルガー・ロー!!」
 上空から聞こえた甲高い声に、ローは右手に刀を持ち左手を地へ向けた。
「ROOM……――シャンブルズ!!」
 悪魔の実の能力を発動する際、を刀を持つ右腕で抱き込むことも忘れなかった。










 突き上げる海流、ノックアップストリームへ着地したサウザンド・サニー号の甲板では、皆が盛り上がっていた。
「けっこう引き離したが……後ろからの砲撃にそなえとけ」
「フランキー! 最高だぁ!!」
「ったりめーだァ!」
 フランキーはいつものポーズをしながら嬉しそうだ。
 そんな賑やかさを壊すように、かちり、と船室の扉のノブが回った。
 麦わら海賊団の全員の視線が集まる中、ドアの向こうから現れたのは、深手を負ったトラファルガー・ローと、それを支える傷だらけのだった。
「トラ男! !」
「麦わら屋……」
「救急箱ぉぉぉ!」
 二人の姿を見た途端、チョッパーは叫びながら駆け出す。
「いったい、何があったの?」
 二人の姿を見て察したのだろう、ロビンが問いかける。
 甲板へ出たすぐへ腰を落としてしまったローを支えて、は腰を落として片膝をつく。
「治療は必要ねぇ。――すぐに行く。……おまえら、すぐにこの島を離れろ」
 ローはに視線を向け、すぐに立ち上がろうとする。
「フェスタは……」
「フェスタ……海賊万博の元締めの?」
 がその問いに頷く。
「フェスタ、だけじゃねェ。やつら、なにかとんでもねぇことを……ハートの海賊団(ウチ)の連中は何とか逃がしたが、ここは戦場に、なる……ッ……」
 ローの語尾が詰まる。息をするにも痛みが走る。
 麦わら海賊団の表情に、緊張が走る。
「行くぞ、
「はい」
「ちょっとトラ男! !」
 腰をあげ、甲板を歩いて柵までたどり着いたローとに、ナミが名前を呼んでストップをかける。救急箱を持って慌てて戻ってきたチョッパーも、引きとめた。
「邪魔したな。――これはおれがさぐってた問題……」
「そんな体でどこ行くのよ!」
「やつらに、礼をしに行く」
 そうローが言葉を返したとき、水飛沫と共に幾重もの砲撃があった。
 引き離していた他の海賊たちが、近づいてきていた。
 これからどうするのか、決断はルフィに任された。
「このまますすむ! ……でも、トラ男ともほっとけねぇ。チョッパー、二人を頼む!」
「わかった!」
「おい! おれたちは行くぞ」
「なら、わたしも行くわ。――フェスタだけじゃない、つまり、組織的な取引や抗争が裏で動いているということ。もしこの万博に罠があるのだとしたら、それは二人の問題だけじゃない。調べに行かせて」
 ロビンの言葉に、ローが渋面を作る。
「じゃあ、おれはロビンちゃんのボディーガードだ」
「隠密行動ならわたしもお供します」
 ロビンに続いてサンジが、そしてブルックが名乗り出る。
「よぉし、わかった!」
「おい!」
 麦わら海賊団の会話にローは割って入ったが、「面白れぇことになりそうだ」とのゾロの声に掻き消えた。
「やべぇことだろ!」
「お宝と関係あるかもしれないし、しっかりね」
「了解、ナミさん!」
「ちっ……」
 ローの渋面が不機嫌な表情になるまで時間はかからなかった。それには苦笑して「こうなったら止まりませんよ」とあきらめるように言えば、彼も今までの経験でわかっているのか、不機嫌ながらも少し表情を柔らかくした。
「よろしくな、トラ男! !」
「はぁ……勝手にしろ」
「よろしくお願いします」
 諦めたように言い放つローの体を支えたまま、は小さく頭を下げた。








     




DVD再生を止めたり戻したりしながら、がんばりました。 セリフはほぼ、オリジナルのままです。 ヒロインが喋る隙がなかったので、無口ですがご容赦を。
2020.04.29