劇場版 STAMPEDE 2 | |
お宝争奪戦が白熱する中、ロー、と一緒に島の地下へとやってきた別行動チームは、奥へと急いでいた。 「この奥が奴の隠れ家だ。だが、気をつけろ。さっきはここで、いきなり仕掛けられた」 大きくなったチョッパーに肩に担がれているローが真剣な顔で言うが、はそれに眉を下げた。 ――真剣な顔で言ってるけど……担がれて真顔って……。 「ん?」 小さなの声に反応し、一行は立ち止まる。 彼女の視線の先を追えば、天井の石柱に映像電伝虫がいた。 監視カメラの役割をしている映像電伝虫から見えない位置へと移動し、壁際に退避する。 「どうします?」 「これ以上は進めなさそうだ。……ロビンちゃん」 の小さな問いにサンジがロビンを見た。ロビンはハナハナの実の能力を使って耳を洞窟の奥へと咲かせ、それと同時に、ブルックもヨミヨミの実の能力を使って幽体離脱をして奥へと消えていく。 「ハハハハハ! 大丈夫、スポンサーのあんたらに害は及ばないさ。全ては順調……想定どうり、この島に『バスターコール』を誘発する」 大変な事態へと動き出したことに、奥から地上へと走る。 「バスターコールって、あの!?」 「海軍の大艦隊による、無差別殲滅攻撃だ。地図にあった島が、なかったことにされちまう」 チョッパーの言葉に、ローが返す。それにさらにサンジが先頭を走りながら返答する。 「んなことはわかってる! なんだってそんな話に?」 「わからない、とにかくみんなに知らせないと」 ロビンがそう言い終わったとき、彼らの正面に、サングラスの男が現れた。 「てめェら、なんでこんなところに!」 男は言い放ち、手に持った十手を振り下ろす。後ろの方を走っていたブルックが剣で防いだ。 「いきなり失礼じゃないですか」 「ブルック、気をつけろ! そいつには海楼石が仕込んである!」 サンジの声にブルックは近づかないほうがいいと判断し、その十手を振り払った。 「そういうことだ。海と同じエネルギーを発する石、能力者はこいつに触れたら何もできねェ」 十手を持つ男、スモーカーは言う。この男を止めるには、能力者以外の覇気の扱える人間でなければならない。 「ここはおれが止める。お前たちはルフィのところへ!」 「行かせるワケ、ねェだろ!」 サンジの言葉に、スモーカーは言い放ちつつ駆け出してくる。 スモーカーの放つ煙に捕まったブルックとチョッパー、そのチョッパーの肩から滑り降りたローは、顔をしかめつつ片膝をついた。 「ロビンちゃんを連れて逃げろ!」 「逃がすか!」 ロビンとローへと煙が伸びてくる。 「離しやがれ!」 ロビンを包む煙をサンジが覇気を纏って消し、ローへ伸びた煙はの覇気を纏った剣、閃雷によって切られた。 「ぐっ! 覇気か」 ロビンを抱き上げ、ローは走り出す。それを上から見下ろす、スモーカー。 「チッ…、てめェら、何を企んでやがる」 「そりゃ、こっちのセリフだ!」 二人が上でぶつかり合う姿を、はただ見上げる。 「ロー……ちゃんと帰ってきてくれ。僕もちゃんと、帰るから」 プルプルプルプル……。 ウソップの持つ電伝虫を鳴らすが、応答がない。 「何が起きてるの? ウソップ」 ロビンは走りながら電伝虫を鳴らし続ける。 ――海兵まで潜入してるとは…どうなってやがる。 ロビンの後ろを走りながら、ローは思考する。 二人の視界に砂が入り足を止めると、男の笑い声が聞こえてきた。 「ハッハッハッハ……。久しぶりだな『ミス・オールサンデー』」 「てめェはクロコダイル」 「驚いた。あなたが動いてるってことは、あの宝……世界を揺るがす何か…ってことかしら」 ロビンの額に、冷や汗が流れる。 「察しがいいな。この祭りの裏には『ダグラス・バレット』が絡んでる」 クロコダイルの言葉に、ローとロビンが驚き声をあげた。 「『ガルツバーグの惨劇』……あの大虐殺を起こした海賊が?」 「奴の能力は少々、厄介でな」 「私にどうしろと?」 「お前じゃない」 砂に消えたクロコダイルが現れたのは、ローの横だった。 「用があるのは、お前だ。……策がある、付き合え」 一方、煙に捕まったままのチョッパーとブルック、そして、その下で戦いを見守る。 煙に捕まった二人を助けることはできるが、今はそのままのほうが安全だろうと思い、はそのままにしていた。 「こんなところでコソコソと、何を企んでやがる!」 十手を振り回しつつスモーカーが言うと、サンジはそれを蹴り飛ばしながら不本意だと言葉にする。 「てめェらこそ! バスターコールって正気か!?」 「あァ!? なんの話だ」 サンジは見上げ、スモーカーは見下ろし、どちらも疑問が浮かぶ中、スモーカーの電伝虫が鳴った。 『スモーカーさん、大変です! バレットが現れて宝を奪取! 島を破壊して、今にも麦わらたちと交戦しそうです!』 地下の洞窟を走るロビンの少し後ろから、追いついてくる四人がいた。 「ロビンの匂いだ!」 「ロビンちゃん!」 「みんな!」 「ロビ~ン! 無事で良かった!」 三人を下ろして小さくなったチョッパーが、ロビンに飛びつく。 「ありがとう」 「彼は?」 「あぁ、それが……いきなり血相変えて、どっか行っちまいやがった」 「なんだったんでしょうねぇ」 「ん? あれ、ロビンちゃん。ローは?」 「そのことなんだけど…」 ロビンはクロコダイルに会って何が起こったのかを話す。 「よし、二手に分かれよう。チョッパーとブルック、それとはルフィたちのところへ戻ってバスターコールのことを伝えてくれ」 それに、ブルック、チョッパー、はうなずく。 「ロビンちゃんはおれと」 「えぇ」 「いいか、みんな。ルフィは必ず宝を獲る。おれたちはそれを信じて動くんだ」 「おう!」 「はい!」 サンジの言葉に、チョッパーとブルックが元気よく返事をする。 ――僕はそれについては関係ないけどね。 は胸中で呟く。 ――どうか、無事に……。 火災で焼け焦げた匂いの充満する中、ルフィを担いで歩いていた傷だらけのウソップの上へ、燃え盛る木材が落ちてくる。 「黄泉の冷気『魂の喪剣《ソウルソリッド》』!」 落ちてきた木材は、冷気によって凍てついた。 もうろうとした意識のなか、ウソップは顔をあげる。 「ウソップー!」 駆けてきたのはチョッパーで、ブルックとチョッパーとの三人は、この破壊されたメイン会場内を、彼らを探して駆け回っていたのだ。 「大丈夫か? ひどい……急いで手当てを」 言いつつ、リュックのなかから薬を取り出そうとするのを、ウソップが止める。 「早ぐ……ルブィを……血を…流しすぎてんだ」 「でもウソップ、お前も…」 「頼む…」 「彼は僕が診ます。応急処置ぐらいならできますから」 「…わかった」 真剣な瞳でチョッパーへ言うウソップに頷き、彼はルフィへと駆け寄った。 「ロビンちゃん急ごう! ここも長くは持たねェ」 「あった!」 サンジとロビンは、まだブエナ・フェスタの地下のアジトにいた。 ロビンは散乱した机の上の資料から、目当てのものを発見した。 「これがあれば…」 そのとき、地面が大きく振動し、地下を揺らした。 天井の岩が大規模に崩壊する。 大きな音とともに崩れてくるその岩が、大きな炎で吹き飛ばされた。 「…………!」 ロビンはその炎の中にいる人物を見て、安堵の息をこぼした。 会場の上空では、メラメラの実とモクモクの実がぶつかり合っていた。 「おれとお前の能力じゃ、勝負はつかねェよ」 メラメラの実の能力者であるサボが、楽しそうに笑って言う。 「てめェの相手をしている場合じゃねェんだよ!」 ぶつかり合う中、バギーの声が聞こえてくる。 「お前らそこどけェェェ!」 二人が振り向くと、どけ!と言いながら自ら突っ込んでくる男。 激突寸前、二人はそれを足で止めた。 落ちていくバキーの後ろから、女帝ハンコックが姿を現した。 「案内ご苦労。そなたら、ルフィの居所を知らぬか?」 「くっ…七武海が……ん!?」 そのとき、ブン!と音がして、誰もいなかった場所へ男が降り立った。 「なんだてめェら! 揃いも揃って何しに来やがった!」 その男がローだとわかった途端、スモーカー十手を彼へと突き出した。その先についている海楼石を自らの長い刀で防ぐ。 「そう熱くなるな。おれはあいつに一泡吹かしてやらねェと気が済まねェだけだ」 「あァ!?」 「おれはこの祭りの黒幕に用がある」 ローが告げ、サボが言った。黒幕とは、ブエナ・フェスタのことだろう。 「おいおい、何油売ってんだ。このスットンキョー共! すぐ逃げねェと殺されちまうだろっ!」 バギーは逃げたいが、バラバラにした足がハンコックに捕まってしまっている。 「そなたら、いったい何の話をしておる! わらわはルフィがどこにおるかと聞いておるのじゃ!」 バギーの体に足を置き、ハンコックは言い放つ。 「ふざけんなてめェ! 足をどけろィ」 スモーカーはそばにあった鉄骨をガンッ!と殴りつけた。 「てめェら、邪魔すんじゃねェ! もう時間がねェんだ!」 「使える戦力が全員バラバラか」 「あァ!?」 スモーカーはイライラした声を放ってローを振り返る。 「お前ら、死にたくねェなら聞け。奴をあの巨体から引きずり出す策がある」 「ハデバカ野郎! 死にたくねェから今すぐ逃げんだろ! アホかおま…………力が……クソ…海楼石か……」 怒鳴り散らしたバギーだったが、スモーカーが海楼石の十手でつついため、地面へと撃沈した。 「続けろ」 「チャンスは一度だ。奴の一撃は島を割る。失敗したら命はねェ」 「海賊の戯言に命張れってのか! ふざけんじゃねェ!」 「だが、他に手はねェ」 「話にならねェ!」 ―――うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ! 上空を通り過ぎていった塊は、そのまま弾きとばされ、彼らのもとへ落ちてきた。それと一緒に、ゆっくりした足音が、ローの隣にとまった。 「お前は逃げなかったのか」 「逃げませんよ。……ローが戦うのはわかってましたから。これだけ戦力がバラバラだったら、一人ぐらい、自分の手足のように動ける人間がいないと」 ルフィがハンコックを見たあと、ローに気づく。 「あっ、トラ男! 良かった、無事だったか! もな!」 「おれの心配は無用だ。麦わら屋、おれに奴を引っぺがす策がある」 「ホントか! やろう!」 |