くくく、と楽しそうに笑うのは彼の癖。
私が彼の低い声に顔を真っ赤にするのもいつものことだけれど、それが毎回、彼にとっては楽しいものみたい。
なかなか慣れない私に、ローさんは嫌な顔ひとつせず付き合ってくれる。
「ありがとう」と「ごめんなさい」が私の中にあって、どちらも表現できないのがもどかしい。
強引に閉じ込めて自分しか見れないように……なんて、きっと腹黒のお兄ちゃんと仲のいいローさんなら出来そうだけれども、そうしないのは私のことを考えてくれているからだと思う。
ローさんへの気持ちが、10分の1でもいいから伝えることができればいいのに。
勇気のたりない私に、いつも手を差し伸べてくれるローさん。
「」
名前を呼ぶ、その声が好き。
私を撫でてくれる、その指が好き。
何も言わず、静かに見守ってくれる、その瞳が好き。
「……………」
自分の思考に捕らわれた私は、ローさんの言葉を聞き逃してしまった。
「こっちを向け、」
言われてローさんのほうを向くと、ローさんは意地悪な笑みを浮かべていて。
「ずっとそばにいろよ」
真正面から言われて、私は思わず顔を真っ赤にして両手で顔を隠してしまう。
2人きりのときは、そうやって言葉にしてくれる。
意地悪な表情をするのは照れ隠し……なのかな?
「見てて飽きねぇ」
喉の奥で楽しそうに笑ったローさんは、私を引き寄せて。
「もう一度、耳元で言ってやろうか?」
そう低い声で私の耳へ言葉を流して、楽しそうに笑った。
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