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36000キロの墜死/谷 甲州

1988年発表 (講談社)

 冒頭の“墜死”の真相については、重力が加速度であることを理解していれば、また宇宙もののSFで宇宙船が加速する場面の描写を読んだことがあれば、かなりわかりやすいと思います。もっとも、犯人が不可能状況を作り出すことを意図していたわけではなく、密室内部の人間を外部から殺害するための手段としてこの“トリック”を使っているわけですが。その意味でも、泡坂妻夫の(以下伏せ字)「球形の楽園」(『亜愛一郎の逃亡』収録)(ここまで)(あるいは赤川次郎の(以下伏せ字)『三毛猫ホームズの推理』(ここまで)もそうか?)を宇宙空間に移したもの、といえるでしょう。

 一番面白いのはむしろ、軌道計算の誤りによるアリバイトリックではないでしょうか。犯人の意図しないものであるとはいえ、SFならではの秀逸なトリックといえます。

2004.11.02再読了

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