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七回死んだ男/西澤保彦

1995年発表 講談社文庫 に24-3(講談社)

 本書で面白いのは、メインの謎の所在とその提示の仕方だと思います。終盤まで“殺人事件”に関する興味で引っ張った後、それが一件落着したと思われたところでおもむろに、しかも予期せぬところから持ち出される謎は、実に衝撃的です。

 ただ一人“反復落とし穴”を認識している主人公は、他の登場人物よりも一段上のメタレベルに位置しているともいえます。そう考えてみると、他の登場人物にとっては謎は存在しないのですから、現実の1月3日を“1月2日の繰り返し”と誤認させる本書のトリックは、“作中作に仕掛けられた叙述トリック”のようなものだといえるのではないでしょうか。

 そしてそれを成立させているのが、零治郎の痴呆気味の症状や、トレーナーにちゃんちゃんこといった服装、さらに主人公の泥酔といった細かな工夫であり、また本人が死んだ後も繰り返しが続くというSF設定の抜け道です。これらが組み合わさって、読者よりも前に主人公自身がトリックに引っかかっているところが非常にユニークだと思います。

2005.02.18再読了

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