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アデスタを吹く冷たい風/T.フラナガン
The Cold Winds of Adesta/T.Flanagan |
1961年発表 宇野利泰訳 ハヤカワ・ミステリ646(早川書房) |
- 「アデスタを吹く冷たい風」
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“国境に近く小屋を建てて、国境のこちら側を捜査した” (21頁)というさりげない伏線がよくできています。
- 「獅子のたてがみ」
- 完全に騙されてしまいました。単なる象徴かと思われた題名が最後に効いてくるのも見事です。
- 「良心の問題」
- テナント少佐の指摘の通り、単なる捕虜が毎日インシュリンの注射を受けることなどあり得ないでしょう。このあまりにも露骨すぎる手がかりのために、わずか3頁目(67頁)で真相が予想できてしまったのが残念です。
- 「国のしきたり」
- “木の葉は森に隠せ”というそのままのトリックは、よくできてはいるものの、少々物足りなく感じられます。
- 「もし君が陪審員なら」
- 途中で提示された仮説が真実だということを暗示する結末は、意外性には欠けているものの、何ともいえない余韻を生み出しています。“感謝を示すための殺人”という真相は、やや説得力を欠いているように感じられますから、意外性を犠牲にしたこの流れが正解でしょう。
- 「うまくいったようだわね」
- ヘレンがチャンセルに罪をかぶせるつもりだというのは予想できましたが、それを明らかにするのに、バルコニーがないという事実をもってくるところが鮮やかです。
- 「玉を懐いて罪あり」
- 真相はわかりやすいとは思いますが、鮮やかな反転は見事です。
2003.10.06読了 |
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