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バルーン・タウンの殺人/松尾由美

1994年発表 ハヤカワ文庫JA401(早川書房)/創元推理文庫439-02(東京創元社)

「バルーン・タウンの殺人」
 目撃者の目の前での犯行にもかかわらず、“見えない人間”ネタになってしまうところがユニークです。後半はやや唐突に感じられますが、“SAU”という伏線がうまく機能しています。

「バルーン・タウンの密室」
 ぬけぬけと“秘密の通路”まで登場させておきながら、誰もそこを通ることができない(ようにみえた)という状況が面白いと思います。容疑者たちの中でただ一人妊婦ではないということもあり、意外な犯人とは言い難い面がありますが、トリックはよくできているのではないでしょうか。ただ、動機にはかなり無理があると思いますが……。

「亀腹同盟」
 冒頭はあからさまに「赤毛連盟」の模倣を示唆するものですが、大橋有佳を画材店から引き離す目的が見当たらないということで、いわゆる“赤毛トリック”の可能性を一度否定しておいて、実は彼女をバルーン・タウンにとどめておく(やはり“赤毛トリック”の変形です)ことが目的だったという真相は、非常によくできていると思います。

「なぜ、助産婦に頼まなかったのか?」
 こ、この真相は……男性としてはどうコメントしたものやら……。

「バルーン・タウンの裏窓」 (創元推理文庫版のみ収録)
(以下伏せ字) 亀腹のシルエットの真相には思わず脱力です。狂言誘拐という真相そのものはさほどでもありませんが、偶然目にした夏乃の原稿をうまく利用しているあたりはよくできています。また、美央が気づいた手がかりも面白いと思います。(ここまで)

2001.03.11読了

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