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バルーン・タウンの手毬唄/松尾由美

2002年発表 (文藝春秋)
「バルーン・タウンの手毬唄」
 “第三の被害者”である星川留奈の自作自演を見破る手がかり(アイライナー)は非常によくできていると思います。見立て事件の最初の犯人(乾物屋の主人)の動機は、ある意味のどかな、バルーン・タウンらしいものといえるかもしれません。

「幻の妊婦」
 編集者の木下が棒高跳びをやっていたために容疑がかかってしまうというのは、少々ご都合主義ではないかと思います。また、木下のアリバイが証明できないことを確認できない状態で犯人が犯行に及ぶのは、やや無理があるように感じられます。ただ、“幻の妊婦”である祖父江志乃が携帯電話を使っていた理由は、十分な意外性もあり、また何ともいえず美しいものです。
 編集長の性別に関する叙述トリックはかなり見え見えで、さほど効果的には思えません。

「読書するコップの謎」
 眼鏡のレンズという伏線はやや露骨すぎるようにも思えますが、魚眼レンズで普通のお腹を妊婦のものに誤認させるというトリックは、なかなか面白いと思います。
 終盤の、暮林美央と須任真弓のやり取りも面白いと思いますが、作中作から須任真弓が老眼鏡を使っていることを見抜くというのは、だいぶ無理があるのではないでしょうか。

「9か月では遅すぎる」
 トリックはかなり強引ですが、一応は伏線もあるので納得せざるを得ないというところでしょうか。ただ、その伏線からサーカスへ、そしてクライマックスへとつながる展開はなかなか笑えます。
 冒頭で登場する謎の言葉の真相はお見事です。特に、雨の日でなければならない理由が秀逸です。

2003.03.23読了

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