地下室の殺人／A.バークリー

　この作品はバークリーのミステリとしては比較的オーソドックスなものであるようですが、最後の最後にシェリンガムがやってくれます。容疑者の犯行を立証するのかと思いきやまったく別の人物を犯人と指摘する、というのもさることながら、ラストでは真相を隠して偽の解決をでっち上げることまで考えています。しかもその理由の一つがモーズビーに“お返し”をするためというのですから傑作です。名探偵らしからぬ名探偵、シェリンガムの真骨頂というところでしょうか。