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ウサギ料理は殺しの味/P.シニアック

Femmes Blafardes/P.Siniac

1981年発表 藤田宣永訳 中公文庫(中央公論社)

 木曜日の町は次のようなシステムで動いていました。

  1. 占星術師ド・シャンボワーズがメサンジュに金を与える
  2. メサンジュが〈ド・ラ・ガール〉に夕食を食べに行く
  3. ウェイトレスのフィネットが店を休む
  4. プティボスケが〈オ・トロワ・クトー〉に夕食を食べに行く
  5. カントワゾーが“狩人風ウサギ料理”をメニューに載せる
  6. 機嫌をよくしたユルルジョームが新製品の飾り付けをする
  7. コレットが客の相手をする
  8. サン=ヴァルベールがクレールの店に注文を取りに行く
  9. 仕事が済んだクレールがフォルジュクランに会いに行く
  10. フォルジュクランがやる気を出し、集会が遅くまで行われる
  11. マルシャイヤ夫人が映画館を開く
  12. 殺人が起こる(1.に戻る)

 まさに“風が吹けば桶屋が儲かる”という感じですが、どこか一つ止まってしまうとすべてが逆になってしまうところも面白いと思います。実際に、カントワゾーがシャンフィエの提案を受けてウサギ料理を出さなくなってから、あるいは殺人犯が死んでしまってからは、町がめちゃくちゃになってしまっています。カントワゾーが本当はウサギ料理を作りたくないという事実や、ユルルジョームの狩りにかける情熱、その愛人の存在、クレールがサン=ヴァルベールに対して密かに抱いている愛情、アル中気味のフォルジュクランの姿、さらにはマルシャイヤ夫人のヒステリーなど、一風変わった町の人々の性格描写がそのまま伏線となっているところも秀逸です。

 犯人が死んでしまった後は、町の有力者たちが町を立て直すために殺人を企むというとんでもない展開になっています。町の経済にとっては上の6.7.8.あたりが重要でしょうから、本来はメサンジュに金を与えればすむことなのですが、そこに気づかない慌てぶりが何ともいえない奇妙な味をかもし出しています。

2001.11.10読了

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