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自殺の殺人/E.フェラーズ

Death in Botanist's Bay/E.Ferrars

1941年発表 中村有希訳 創元推理文庫159-17(東京創元社)

 “自殺に見せかけた他殺に見せかけた自殺に見せかけた他殺”(304頁)という、幾重にも重なった真相には恐れ入りました。結局のところ、前夜にも自殺を図ったエドガー自身の意志はもちろんのこと、自殺に見せかけようとするゴードンと他殺に見せかけようとするハイランドの思惑が真っ向からぶつかり合い、さらに(おそらくは後ろ暗いところがあるために)自殺と印象づけたいヴァネッデンも絡んでくるというように、複数の人間の意図が一つに重なってしまったために事態が複雑になってしまったということでしょう。

 ペギーの死を、“最初の図式の線をより太く、はっきりさせ”(293頁)るものだとしたトビーの推理は面白いのですが、ハイランドがそこまでやるというのは無理があるように思います。

 余談ですが、285頁で説明されているパラフィン包埋は学生の頃にやったことがあります。実際の作業はもっと面倒で、キシロール(キシレン)が水に溶けないために、まず組織内の水分を段階的にエタノールに置換し(例えば30%エタノール→50%エタノール→70%エタノール→100%エタノール)、次に同じようにキシロールに置換してやる必要があります。最後にそれを加温しながらパラフィンに置換してようやく完了です。

2005.08.31読了

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