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銀のカード/ボアロー,ナルスジャックCarte Vermeil/P.Boileau & T.Narcejac |
1979年発表 岡田正子訳 ハヤカワ・ミステリ1364(早川書房) |
本書では読者に対して、視点の固定による罠が仕掛けられています。ミッシェルの手記に書かれているのは、日常生活を通じてミッシェルが作り上げた物語であり、読者はミッシェルの視点/思考という“フィルター”を通して事件を体験することになるため、リュシイルが殺人犯だという“ミッシェルの物語”に囚われてしまうのです。他の人物が犯人である可能性など、ミッシェルの頭には浮かんでもいないのですから。 その“フィルター”がエピローグで一気に取り払われ、ミッシェルの物語の裏で(クレマンスらによる)別の物語が進行していたことを明らかにするという手法は、実に鮮やかです。被害者たちそれぞれの相続人に動機があり、クレマンスに機会と手段があるというのは、十分納得できるところです。 何とか生き延びたミッシェルですが、よりによってクレマンスの待つ〈ヴァル・フルーリ〉へ移ってしまったことで、再びその身に危険が迫ることが暗示されています。何ともいえない結末です。 2004.09.28読了 |
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