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天井の足跡/C.ロースン

The Footprints on the Ceiling/C.Rawson

1939年発表 北見尚子訳 世界探偵小説全集9(国書刊行会)

 ロースンの作品では、探偵役のマーリニが必要以上に読者を混乱させているように感じられます。奇術師の習性として仕方がない部分があるのかもしれませんが、作品に盛り込まれる内容が豊富であることとあいまって、プロットの整理があまりにも不充分な印象を受けます。逆にいえば、これこそがロースンの特徴なのかもしれませんが。

 広場恐怖症のリンダが離れた屋敷で死んでいた謎はユニークですし、そこから導き出される逆説的な犯人の条件も面白いと思います。そしてアーノルドの銀中毒にも驚かされました。

 リンダ殺害の動機もまったく不明で、唯一動機を持っていたアーノルドには犯行が不可能だったという状況もユニークです。途中までは見事なホワイダニットだと思いました。ただ、真の標的がラプールだったということが明らかになった時点で、犯人の目星がついてしまうところが残念です。

 フロイドを殺害した手段は秀逸です。そして、潜函病による死体がホテルの部屋で発見されるという状況も魅力的です。しかし、この真相はもう少し引っ張ってもよかったのではないでしょうか。もったいなく感じてしまいます。

 後日談は余計ではないかとも思いましたが、関係者全員が逮捕されてしまったという最後のオチはまずまずだと思います。

2000.04.27読了

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