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セリヌンティウスの舟/石持浅海

2005年発表 カッパ・ノベルス(光文社)

 美月と磯崎を除いた四人が“セリヌンティウス”というのはいいとしても、美月と磯崎の役どころには今ひとつしっくりこないところがあります。

 まず、“メロス”である美月が先に“完走”してしまっているところが釈然としません。『走れメロス』では、セリヌンティウスのメロスに対する信頼とともに、メロスのセリヌンティウスに対する友情も試されていたはずなのですが、美月はあくまでも試す側であって試される側ではありません。

 また同じように、“審判”であり“セリヌンティウス”に疑惑を吹き込む磯崎は、確かに“ディオニス”の役どころといえるのかもしれませんが、最後まで“審判”の役目をまっとうできるかどうかという意味で、彼も美月に試されていたように思います。

 つまり、“メロス”と“ディオニス”の役どころがきっちり分かれていないため、見方によってはどちらともいえるように思うのですが……。

2005.10.19読了