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しあわせの理由/G.イーガン

Reasons to be Cheerful and Other Stories/G.Egan

2003年発表 山岸 真編・訳 ハヤカワ文庫SF1451(早川書房)

 一部の作品のみ。

「愛撫」
 キャサリンが生み出された理由は途中で明らかになりますが、事件が起きた理由、リンドクイストの徹底ぶりが強烈です。

「移相夢」
 ラストの“わたし”が埋葬される描写は、現実ではなく“移相夢”であると思われます。しかし、その“移相夢”は一体どこ(いつ)から始まっているのか。また、ロボットの“移相夢”なのか、それとも有機脳の“移相夢”なのか。外界と関わりのない脳内だけの“体験”だとすれば、真実はまったくわかりません。しかも、ロボットの“移相夢”は記憶に残りませんし、有機脳の“移相夢”だとしてもそのまま消滅してしまう運命にあります。この作品の少なくとも終盤は、純粋に個人的な物語だといえるでしょう。

「チェルノブイリの聖母」
 題名だけで、原発事故と放射能絡みであることが予想できてしまうのが、もったいないと思います。結末は、「道徳的ウイルス学者」とは対極にあるようにも思えますが、宗教という対象そのものではなく、それを扱う人々の問題であるということなのでしょうか。

2004.11.15読了

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