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技師は数字を愛しすぎた/ボワロ&ナルスジャック

L'ingenieur aimait trop les chiffres/P.Boileau & T.Narcejac

1958年発表 大久保和郎訳 創元推理文庫183(東京創元社)

 まず、真の動機を隠蔽するために、核燃料チューブというとんでもないものをもってきたところがよくできていると思います。これによって動機が隠蔽されるだけでなく、サスペンスを高めるのに一役買っているからです。しかしその意味で、中盤以降では核燃料チューブの扱いが軽くなっているため、中だるみしてしまっているのが残念です。例えば、偽の脅迫状を当局に送りつけるなどして、もう少しひっぱることができたのではないでしょうか。

 密室トリックについては、特にソルビエ事件のものがよくできていると思います。カーのある作品(以下伏せ字)(『三つの棺』)(ここまで)のバリエーションではありますが、犯人が第一発見者の一人となっていることで、効果的なミスディレクションとなっています。

 しかし、リンダの部屋からのモンジョの消失については、正直言って拍子抜けです。“あすこだけはぼくもなかなか捜そうという気にならなかったよ”(232頁)というマルイユの台詞も、ご都合主義にしか感じられません。

 また、モンジョが結局生き残っているというのには納得がいきません。いくら当人も同意したとはいえ、罪をかぶせるわけですから、モンジョは追われる身となってしまいます。そうなるとやはり、口を封じておかないと危険なのではないでしょうか。

2000.09.17読了

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