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複製症候群/西澤保彦

1997年発表 講談社ノベルス(講談社)

 〈ストロー〉の中の連続殺人には、SF設定がうまく生かされています。が、“コピー”を記憶や人格までもが同じ“双子”の一種と考えてみると、それをアリバイトリックに利用するのはごく自然なことでしょう。結局は、片方が自殺するという特殊な事態ではあるものの、古典的な“双子トリック”をほぼそのまま使ったにすぎないともいえます。

 本書で作者が最も書きたかったのは、“オリジナル”と“コピー”の分岐ではないでしょうか。二人の草光さんの思考にずれが生じていたことからもわかるように、複製された時点では記憶も人格も同一だったにもかかわらず、その瞬間から“オリジナル”と“コピー”は分岐していきます。“コピー”の主人公が殺された古茂田先生を復活させようと苦闘していたのに対して、“オリジナル”の主人公はその古茂田先生を殺害しようとした――つまり、複製されてからのわずかな時間の間に、二人の主人公の思考、行動、そして運命が、大きく分かれてしまった、ということなのです。

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 なお、作中ではまったく触れられていませんが、川に流されてしまったサトルの運命は相当に悲惨です。流れに乗って〈ストロー〉を通り抜けると内側に“コピー”が生み出され、その“コピー”がまた流されて〈ストロー〉を通り抜け……と、〈ストロー〉が消滅するまで複製が繰り返されることになります。“コピー”が生まれるのに1分程度かかる(51頁)としても、〈ストロー〉消滅までにはかなりの数のサトルが生み出されてしまいます。〈ストロー〉周辺にはそれなりの警備が敷かれるでしょうから、外部の誰かが異常に気づくのは比較的早いはずですが、対応は難しいと思います。

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 最後になりますが、「あとがき」で言及されている岡嶋二人作品は、おそらく(以下伏せ字)『そして扉が閉ざされた』(ここまで)でしょう。(以下伏せ字)閉鎖状況が描かれている(ここまで)のもさることながら、(以下伏せ字)自分が殺人者(本書では未遂ですが)であることをまったく知らない主人公(ここまで)という趣向が共通しています。

2004.09.15再読了

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