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ミステリークラブ/霞 流一

1998年発表 (角川書店)

 いくつかのトリックの中で、特筆すべきは墨畑家の蔵で起きた過去の事件でしょう。倒れた壁に押しつぶされて消失したという真相は、いかにもバカミスといった感じで作者の持ち味が出ていると思います。しかしこの吊り壁についても先々代の時代劇趣味が伏線となっているため、納得せざるを得ません。

 犯人を指摘するための、奈元殺しにおける時計のロジック、そして尾瀬殺しにおける自動車のロジックはよくできていると思います。特に後者は非常にすっきりしたもので、なおかつ“犯人が自分の車を使わなかったのはなぜか?”という疑問が印象的です。

 ただ、闇の犯人の真相はあまり後味のいいものではなく、正直なところ、なくてもよかったのではないでしょうか。木下殺しだけが別の犯人だったという決め手も特にないようですし。

 一方、川上茂雄が三億円事件の犯人だったという最後の仕掛けはよくできています。一万円札の肖像画にがあったという手がかりがさりげなく提示されているところも秀逸です。

2001.11.08再読了

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