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編集室の床に落ちた顔/C.マケイブ

The Face on the Cutting-Room Floor/C.McCabe

1937年発表 熊井ひろ美訳 世界探偵小説全集14(国書刊行会)

 裁判が終わった後のマケイブとスミス警部の対決まではそれなりに本格ミステリ的な形をとっていますが、エピローグの途中から無茶苦茶な展開になっています。死んだはずのマケイブが再登場して、“作品”の解説をしていたミュラー老人と言葉を交わす場面には思わず爆笑です。そして、ミュラー老人がマリアを撃ち殺すラストには唖然とさせられます。

 結局この作品では、メタフィクション的な構造も取り入れつつ、“解決”を無効化することで、ミステリという形式が放棄されているといってもいいでしょう。解説における小林晋氏による“解決”も、秀逸ではあるものの、すでにミステリであることを放棄した本編の前にはあまりにも無力です(小林氏本人もその自覚があったからこそ、解説のラストがあのような形になったのではないでしょうか)。読者としては、こう表現するしかないでしょう――“とんでもない作品だった”と。

2002.02.06読了

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