踊り子の死/J.マゴーン
Death of a Dancer/J.McGown
1989年発表 高橋なお子訳 創元推理文庫112-05(東京創元社)
事件の様相が今ひとつはっきりしないこともあって、終盤まで誰でも犯人であり得るという状況になっています。捜査陣の疑惑はサムからフィリップ、そしてトレッドウェル校長にまで向けられますが、凶器にも着目されるとはいえ、ほとんど男性なら誰でもいいという感じです。その中で、ようやく浮かんできたミステリらしい動機とともに、女性であるキャロラインに疑惑がかかるところが面白いと思います。
正直なところ、これで決まりかとも思ったのですが、“ときには、ものごとが見た目どおりのこともある”
(434頁)というジュディの言葉とともに、“なぜダイアナがレイプされなければならなかったのか?”という当初の謎に回帰していく展開がよくできています。そしてその解答もなかなか意表を突いたものになっています。
マシューの服が乾いていたという事実をめぐる、鮮やかな大逆転も印象的です。
2006.04.18読了