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魔術師を探せ!/R.ギャレット

The Eyes Have It and Other Stories/R.Garrett

1964年発表 風見 潤訳 ハヤカワ文庫HM52-2(早川書房)
「その眼は見た」
 冒頭のダンカンの台詞で黒魔術による殺人を匂わせておいて、最後で反転させる構図はよくできています。また、デヴルー伯爵が持っていた女物の服に関する伏線がよくできています。

 余談ですが、怪奇小説などで(場合によってはミステリでも)ありがちの、“瞬時に死んだ人間の網膜には最後に見た光景が残されている”というアイデアには、あまり説得力が感じられません。網膜の細胞までも瞬時に活動を停止するわけではないので、脳であればともかく、網膜に映し出された映像はリセットされてしまうのではないでしょうか。
 しかしこの作品では、“被害者の心から網膜へと逆流した映像を魔術によって取り出す”という巧妙な設定がなされているため、上記の問題はクリアーされています。しかも、脳で処理された後の映像であることから、客観的な映像ではなくなってしまっているということを生かした、見事なエンディングとなっています。

「シェルブールの呪い」
 蝋人形の代わりによく似た人間を使って、〈相似の法則〉による支配を行おうとするアイデアはユニークだと思います。そのため、パウル・サルトの方はシェルブール侯爵にできるだけ近づけるよう、高貴な身なりをさせられ、これによって死体がシェルブール侯爵と間違われてしまったという構図はよくできています。

「藍色の死体」
 インクのしみをごまかすと同時に、古代アルビオン聖協会に疑惑の目を向けるために死体を藍色に染めるというアイデアは秀逸です。また、魔法がかけられた防腐戸棚が効果的に使われています。

2000.08.18再読了


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