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迷宮課事件簿〔I〕/R.ヴィカーズ

The Department of Dead Ends/R.Vickers

1949年発表 吉田誠一・村上啓夫訳 ハヤカワ文庫HM48-1(早川書房)

 一部の作品のみ。

「ゴムのラッパ」
 この作品では、被害者の夫である“ダニロ・プリンス”が最も疑わしいことがはっきりしていて、しかもフェアブラス夫妻による面通しで確認できるというところがポイントです。最大の難関は、“ダニロ・プリンス”が誰なのかという手がかりがほとんどないところで、逆にそこさえクリアーできれば後は簡単。したがって、論理的ではないにしても、ゴムのラッパに関して奇怪なふるまいを見せたジョージ・マンシーを事件と結びつけてみるのは妥当といえるでしょう。

「笑った夫人」
 被害者の衣裳の問題はともかく、殺人計画につながる原稿を残しておくという致命的な失策はいただけません。あまりにも迂闊すぎです。

「ボートの青髭」
 殺意を立証するのはほとんど不可能と思えたのですが、被害者が人の命を救ったほどの泳ぎの達人だったという事実は、これしかないという感じの決め手です。

「失われた二個のダイヤ」
 切られたバンドを入れ代えることで、自分が立ち去った後に宝石泥棒が侵入したと見せかけようとしたブランドン卿ですが、卿が持ち去った方の旅行カバンからダイヤが見つかってしまったのが運の尽き。
 それにしても、土壇場で〈迷宮課〉を出し抜き、自殺のための時間を稼いだブレンドン卿の行動は、天晴れというべきでしょうか。

「恐妻家の殺人」
 愛人殺しを犯したカマートンが、妻の失踪により妻殺しの疑惑をかけられてしまうという展開が笑えてしまいます。

「盲人の妄執」
 盲人として扱われることを嫌ったシルベイが、盲人ゆえのミス(被害者のシガレット・ケースを自分のものと混同)を犯してしまうという皮肉が、何ともいえない余韻を残しています。

2004.05.04読了

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