老女の深情け／R.ヴィカーズ

　一部の作品のみ。

「ある男とその姑」

　被害者の家に残された方（ペンフォールド自身が買った方）ではなく、ペンフォールドが持ち帰った方（マッジが買った方）の詩集が決め手となったのには意表を突かれましたし、その解決も鮮やかです。が、ペンフォールドが詩集を取り違えてしまったこと、そしてそれが最終的な決め手となることは見え見えであるため、インパクトが半減してしまっているのが残念なところです。

「そんなつまらぬこと」

　“つまらぬこと”を気にするのをやめられなかったために妻を殺す羽目になったカーウェンにとって、警視の最後の台詞はあまりにも残酷です。

「夜の完全殺人」

　犯行よりも前に失踪を届け出るという、逆転の発想に基づいた大胆な計画が面白いと思います。そして、発作を起こした妻がよりによって“ウォールソール7番地”に厄介になるという途方もない偶然はもちろんのこと、何とかそこへ行くのを避けようとする犯人の奮闘ぶりが笑えます。