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柳園の壺/R.ファン・ヒューリック

The Willow Pattern/R.van Gulik

1965年発表 和爾桃子訳 ハヤカワ・ミステリ1774(早川書房)

 作中に登場するはやり歌では、梅{メイ}・胡{フー}・易{イー}の三人が寝床・片眼・頭を失うことになっていますが、誰がどれに対応するかははっきりしません。そんな中、死体が発見された状況からは考えられない(むしろ、17頁に示されているように“頭”に結びつける方が自然でしょう)にもかかわらず、胡が梅の死を“寝床”と結びつけてしまったことが手がかりになっているのは面白いと思います。しかもそれが、易を“片眼”に、そして自分を“頭”に結びつけたことで間接的に浮かび上がってくるところも工夫されています。とはいえ、やはり見え見えではあるのですが。

 胡としては、梅の死が“寝床をなくした”というフレーズに当てはまったことで、はやり歌を天意の表れととらえてしまったのではないでしょうか(時代も時代ですし)。そして、狄判事も最後に指摘しているように(160頁)自分の罪を“頭”に結びつけた結果、易の死を知らされてとっさに“片眼をなくしましたか?”(72頁)と口走ってしまったのではないかと思います。童謡殺人は、例えば犯人自身が命を狙われていると誤認させるような場合を除いては、次の標的の恐怖心を煽る演出的効果を目的とするものが多いと思うのですが、この作品ではその演出的効果が犯人自身の心に最も強く作用したという意味で、非常にユニークだと思います。

 易殺しについては、仕込み袖の伏線がなかなかよくできていると思います。また、最後に明らかになる柳園の壷のダイイングメッセージも鮮やかです。

2005.08.11読了