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ローリング邸の殺人/R.スカーレット

In the First Degree/R.Scarlett

1933年発表 板垣節子訳 論創海外ミステリ34(論創社)

 本書のトリックの中心となっているのはアーロンとファラデーの入れ替わりですが、アーロンの肖像画の顔の部分が黒く塗りつぶされていたという場面(53頁〜54頁)で気づいてしまいました。(恨みなどから)絵を損なうのが目的であれば、刃物などで切り裂く方が手っ取り早く自然なはずで*、わざわざ黒く塗りつぶすのは別の意図――例えば肖像画の顔を隠すこと――によるものだと思われたからです。

 そして、その後にようやく登場した“アーロン”の、“おそらく五十歳前後。灰色になりかけた髪は薄く、その髪をすだれ状に額に下ろしている。面長の顔。刻まれたしわのことごとくが”(58頁)という描写が、“ファラデー”の容貌についての“おそらく五十代。自分より年上にも、年下にも見える。顔には深いしわが刻まれ、髪は灰色。”(6頁)という描写と類似していることで決定的。

 しかし、いくら容貌が似ているとはいえ、サラ、ジェシカ、ヒューリングといった身近な人々には通用しないはず……と思っていたのですが、ヒューリングはろくに死体を見ようともしない(97頁〜100頁)上に、(サラとジェシカの)“二人をあの部屋に入れるつもりはありません。”(100頁)と言い出す始末。ヒューズに細工をして照明がつかないようにするという工夫もされてはいますが、やはりそれだけではトリックを成立させるには力不足で、犯人(及び作者)にとって都合がよすぎるように感じられるのが難点です。

 入れ替わりをサポートする共犯者が必要となるのも難といえば難ですが、そのあたりの処理はまずまずだと思います。遺言状(だけではありませんが)で執事のランダーを支配しているのがうまいところですが、その遺言状の内容がサラへの恨みの表れであるように見えるのも巧妙です。そして、窓にぶら下げられたモップが合図として使われているのも印象的ですし、そのモップが原因でジェシカの命が狙われるという展開もよくできています。

*: アーロンとしては、自身の肖像画を刃物で切り裂くことにはさすがに抵抗があるので、塗りつぶすという手段を採用したのでしょうが。

2008.02.07読了

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