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ローリング邸の殺人/R.スカーレットIn the First Degree/R.Scarlett |
1933年発表 板垣節子訳 論創海外ミステリ34(論創社) |
本書のトリックの中心となっているのはアーロンとファラデーの入れ替わりですが、アーロンの肖像画の顔の部分が黒く塗りつぶされていたという場面(53頁〜54頁)で気づいてしまいました。(恨みなどから)絵を損なうのが目的であれば、刃物などで切り裂く方が手っ取り早く自然なはずで(*)、わざわざ黒く塗りつぶすのは別の意図――例えば肖像画の顔を隠すこと――によるものだと思われたからです。
そして、その後にようやく登場した“アーロン”の、
しかし、いくら容貌が似ているとはいえ、サラ、ジェシカ、ヒューリングといった身近な人々には通用しないはず……と思っていたのですが、ヒューリングはろくに死体を見ようともしない(97頁〜100頁)上に、(サラとジェシカの) 入れ替わりをサポートする共犯者が必要となるのも難といえば難ですが、そのあたりの処理はまずまずだと思います。遺言状(だけではありませんが)で執事のランダーを支配しているのがうまいところですが、その遺言状の内容がサラへの恨みの表れであるように見えるのも巧妙です。そして、窓にぶら下げられたモップが合図として使われているのも印象的ですし、そのモップが原因でジェシカの命が狙われるという展開もよくできています。
*: アーロンとしては、自身の肖像画を刃物で切り裂くことにはさすがに抵抗があるので、塗りつぶすという手段を採用したのでしょうが。
2008.02.07読了 |
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