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血のついたエッグ・コージイ/J.アンダースン

The Affair of the Blood-Stained Egg Cosy/J.Anderson

1975年発表 宇野利泰訳 文春文庫275-86(文藝春秋)

 ネタバレなしの感想には書きませんでしたが、事件を複雑にしているもう一つの要因が、複製品も含めた四挺の銃のめまぐるしい動きです。しかし、本物だけでなく複製品の方も対になって存在するということは十分予想できますし、二人の収集家の心理がしっかりと描かれているため、お互いに盗みをはたらくという異常な状況にも納得できます。

 さらに話をややこしくしているのが、アドラー/フェルマン/バチェフの入れ代わりです。これについては、バチェフがアドラーになりすましていることは会談の奇妙な様子から何とか推測できないこともないかもしれませんが、アドラーがフェルマンになりすましていることを示す証拠が完全に後出しになっているところが気になります(ついでにいえば、ソーントンの目的を裏付ける証拠も後出しになっています)。このあたりが、少々残念に感じられるところです。まあ、バチェフやザポプュラスのスパイが介入していることは、序盤に示されているともいえますが。

 事件のその他の点については、ウィルキンズ警部のにつきるでしょう。特に、“ジェラルディーン嬢の視力”などは秀逸です。また、カノン砲で死体を飛ばすというトリックはあまりにも豪快ですが、標的としてを選ぶことで、死体に加わる衝撃を緩和するという工夫がよくできていると思います。

 結末はやや後味が悪く感じられる部分がありますが、(表向き)法律を曲げることなく救いが用意されているところは、なかなかよく考えられていると思います。

2003.06.11読了

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