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五番目のコード/D.M.ディヴァインThe Fifth Cord/D.M.Devine |
1967年発表 野中千恵子訳 現代教養文庫3043(社会思想社) |
この作品ではやはり、ミッシングリンクの扱いがよくできていると思います。作中で示されているように(176頁)、四番目までの被害者の共通点は体が不自由であることなのですが、それが示された直後の箇所(177頁)では、あたかもその共通点が目的であるかのような、つまり体の不自由な人物を殺すことが犯人の目的であるかのような示唆がなされています。ところがその実態は、犯行が可能となる条件、すなわち体が不自由な人物しか標的として選び得なかったという、いわばまったく逆方向のベクトル(選んでつまみ上げるか、ふるいの中に残るかの違い、といったらおわかりいただけるでしょうか)によるものだったというわけで、その鮮やかな逆転が見事です。 つまり、犯人につながる手がかりとなるはずの“真のミッシングリンク”が、表面に見える“偽のミッシングリンク”によって隠されているという構図で、非常に面白いものになっていると思います。 結局、犯人特定につながる最初の手がかりとなったのは、犯人の性格と行動の食い違いだったわけですが、その次の、タイプライターの大文字のFという手がかりがよくできています。その巧妙な隠し方と、鮮やかな提示は非常に印象的です。 しかしながら、細かい謎はともかくとして、犯人の見当はつけやすくなっているのが少々残念です。最初に襲われたジーン・ラボックが容疑の外に置かれている状況は、いわゆる“バールストン先攻法”の典型なのですから。ラボックが何者かに襲われた場面が目撃されているなど、真相を隠すための工夫はなされているものの、ある程度ミステリを読み込んだ読者の頭には、ラボックに対する疑念が浮かんだのではないでしょうか。 2003.07.08読了 |
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