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閘門の足跡/R.A.ノックスThe Footsteps at the Lock/R.A.Knox |
1928年発表 門野 集訳(新樹社) |
本書を読んだ方の大半がそうだと思いますが、ナイジェル・バーテルの再登場(165頁)には大いに驚かされました。変装を解くことが一つの変装になるという逆説的なアイデアも秀逸です。ただ、ナイジェルが姿を現したことで必然的にデレックの方に疑惑が向いてしまい、最後に明かされる真相もさほど意外なものに感じられないのがもったいないと思います。 そして、デレックの企みのいびつさ――緻密さとずさんさの同居――が、アヘン中毒という理由ですべて片付けられているのはいかがなものかと思います。真相を隠蔽しつつフェアプレイを担保するためには、犯行計画をある程度複雑なものにした上で、多少不合理な形でも手がかりを残すようにする必要があったのかもしれませんが、やはりご都合主義的な印象を禁じ得ません。個人的には、ノックス自身による“十戒”の中に、“アヘン中毒などで思考の不安定な人物を犯人としてはならない”という一項を加えるべきではなかったか、とも思います(もちろん冗談ですが、少なくとも“中国人を登場させてはならない”よりはよほど重要ではないでしょうか)。 2006.01.19読了 |
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