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悪魔とベン・フランクリン/T.マシスンThe Devil and Ben Franklin/T.Mathieson |
1961年発表 永井 淳訳 ハヤカワ・ミステリ720(早川書房) |
この作品でまず残念なのは、真相の大半が途中で明かされてしまう点です。ジョサイア少年(及びトマス)とマグナスとの間に接点がないために共通の動機はなかなか想定できませんし、どちらか一方がカムフラージュだというのも考えにくく、結果として事件の様相が不可解になっている部分があると思うのですが、エドウィン・ベントの存在が示された時点で、それぞれ独立した動機による殺人、すなわち(エドウィン・ベントとしての)過去に関わるジョサイア少年殺しと現在の立場に関わるマグナス殺しとの組合せであることが明らかになってしまいます。こうなると、後に残されるのは“誰がエドウィン・ベントなのか?”というシンプルな謎だけで、物足りなく感じられてしまうのは否めません。さらにいえば、そのエドウィン・ベントの存在が、エディスの話という単純な形で示されてしまうのも拍子抜けです。 そして、そのエドウィン・ベントの正体については、一旦容疑者全員を否定するというひねり具合はいいのですが、生き別れの双子の兄弟という真相そのものは、今となってはやはりお粗末に感じられます。色盲に関する伏線や、それに絡んだ肖像画の扱いなどはよくできていると思うのですが……。 例を見ないほど多人数を前にした解決場面はインパクトがありますが、それが単なるこけおどしではなく、真相解明に必須、すなわち容疑者である同志会のメンバーたちの過去に関する証人としても機能しているところが秀逸です。 最後になりますが、“ジョン・ウォトリイ”が落雷の直撃を受けてしまうという結末は、ベンジャミン・フランクリンを主役とした物語に見事にはまっています。 2003.10.20読了 |
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