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わが兄弟、ユダ/ボアロー/ナルスジャック

Frere Judas/P.Boileau & T.Narcejac

1933年発表 佐々木善郎訳 ハヤカワ・ミステリ1330(早川書房)

 アンデューズが4人を殺そうとする動機が、パトリック・ノランの遺産に関係がありそうだということは、次第に明らかになっていきます。しかし、ヴァン・デン・ブルックが殺される直前の、“死ぬ直前にパトリック・ノランがわれわれに何か言おうとしたことは間違いありません”(47頁)という台詞に、作者のトリックが仕掛けられています。パトリックが弟のノランよりも後に死んだ(この場合、問題なく遺産は教団に譲り渡される)ことを証言するヴァン・デン・ブルックが、なぜ殺されなければならないのか。ここに大きな謎が生じます。

 手がかりはいくつかあります。例えば“もしかすると、レアはこういうかもしれない。“口髭のあるほうの男は、完全に死んではいなかったわ……”そうなったら……アンデューズは若い娘の首筋を眺めた”(61頁)というアンデューズの独白、そして(2人が死んでしまった後に)このときアンデューズが、この二人がチェットとパトリックのノラン兄弟だとわたしたちに教えてくれたのです(76頁)というブレゾの台詞などです。

 ヴァン・デン・ブルックも、先の台詞の直後の“彼の大きな髭が震えているのが見えましたから……”(47頁)という証言のために殺されることになったわけですが、それでも、先の台詞があまりにもはっきりとしているために、真相が見えにくくなっています。よくできたトリックだといえるでしょう。

2000.08.30読了

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