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生者と死者/泡坂妻夫

1994年発表 新潮文庫あ23-6(新潮社)

 まずは、短編と長編の主な変更箇所の対照表を。

  短編 長編
中村千秋 美青年 美しい女性
里美 女性? 男性(里美悟郎)
泉桂 桂明智
ランチ 奇術を売り物にしているバー 花丸ランチ(弁当屋)
キングのクラブ カード キング社製のゴルフクラブ
144-145頁 大人の時間(笑) 奇術

 というわけで、中村千秋と里美の性別が入れ替わっているのが最大の驚きです。しかも、長編では千秋と千春の入れ替わりトリックも組み合わされているわけで、余計に読者の混乱を誘っています。作者の見事な技が十分に発揮されているといえるでしょう。


 中村千秋の残した“ハコシスコマハヨウンシ”というメッセージは、短編では“ハンコウハマスコヨシシ(犯行は益子芳二)”と解釈されていますが、長編ではさらに“金コシスコマハ銀ウンシ(金子死すコマは銀雲寺)”、“ヨコハマシンコウスハシ(横浜新河津橋)”/“シンヨコハマコウスハシ(新横浜河津橋)”という、二重三重の意味が込められたものになっていて、感嘆するほかありません。特に後者は、それ自体がトリックとして機能するユニークなものだと思います。

2001.04.13再読了

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