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グール/M.スレイド

Ghoul/M.Slade

1987年発表 大島 豊訳 創元ノヴェルズ ス3-1,2(東京創元社)

 叙述トリック+多重人格ネタはやや食傷気味ではありますが(そのためにさほど意外にも感じられませんでしたが)、ここまでやってくれれば文句はありません。人格の変遷の経緯もよく考えられていると思います。また、エイズ流行の初期、1986年という年代設定に基づく“ジャック”の動機が印象的です。

 ロザンナ殺害の真犯人については、胸のサイズというわかりやすい伏線もありましたが、『髑髏島の惨劇』を先に読んだために、デボラがチャンドラーの前から“退場”することが予想できたのが、残念といえば残念です。

 最も意外だったのは、〈恋人たちの洞窟〉の事件の犯人が別人だったことです。複数の殺人鬼が存在すると見せかけて多重人格、という真相の裏に、便乗犯をまぎれ込ませるというひねくれ具合が面白いと思います。

2004.09.06 / 09.06読了

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