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見えないグリーン/J.スラデック

Invisible Green/J.Sladek

1977年発表 真野明裕訳 ハヤカワ文庫HM103-1(早川書房)

 密室殺人である第一の事件は、非常にユニークです。凶器自体もそうですが、狭いトイレでのみ可能な犯行方法が独創的です。また、ドロシアの家にある自分の写真を見られるわけにはいかなかったという、その犯行の動機にも意外性があり、見事なものです。

 第二の事件では、ダンビの目が見えなかったという真相が何よりも衝撃的でした。また、犯行時のダンビの台詞もうまい手がかりになっています。

 第三の事件では、犯行の機会がユニークです。邸の内外をつなぐわずかな隙間、そして死体の移動によって、不可能状況が成立しています。また、ドロシアに隙間から頭を出させる手段にも説得力があります。
 ところで、このトリックは我孫子武丸の某作品に通じるところがあるように思いますが……。

 全体的に見ると、そもそもの事件の発端(地上げ?)はちまちました感じがしないでもないですが、前述のストークス少佐殺しの動機はよくできていますし、〈グリーン〉という名前を使ったことから、虹の七色をミスディレクションとして採用するというアイデアも秀逸です。

 ただ、物語の進行上仕方なかったとはいえ、ドロシアが殺されてしまったのが個人的には残念です。

2000.06.10読了


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