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サム・ホーソーンの事件簿 I/E.D.ホック

Diagnosis: Impossible/E.D.Hoch

1996年発表 木村二郎訳 創元推理文庫201-02(東京創元社)

 一部の作品のみ。

「水車小屋の謎」
 日誌の隠滅だけでなく、コードウェイナーの死体を解凍するために水車小屋に火をつけたという真相は、非常に面白く感じられます。

「呪われた野外音楽堂の謎」
 いわば本当の死因を隠すためという犯人の動機は、なかなか意外で印象的です。また、そのためにあえて公衆の面前で殺すというところもユニークです。

「乗務員車の謎」
 一見不可能犯罪のようでありながら、実は乗務員が共犯だったという構図はよくできていると思います。また、ダイイングメッセージも鮮やかです。

「十六号独房の謎」
 風船が小道具としてうまく使われています。また、ヘンクルが聞いた“銃声”という伏線が秀逸です。

「古い田舎宿の謎」
 レンズ保安官が当初疑った通りだったという真相には、あまり面白みが感じられません。それ以外の可能性を考える積極的な理由が見当たらないのも問題でしょう。

「投票ブースの謎」
 常識的に考えて最も怪しいのは、投票ブース内部、ひいては投票箱でしょう。開票後に凶器が見つからなかったこと、そして被害者の「殺人犯……」「刺殺して……」という言葉でうまく隠蔽されてはいますが、真相は見え見えではないでしょうか。
 もっとも私の場合、H.S.サンテッスン編『密室殺人傑作選』に収録されたある作品((以下伏せ字)A.バウチャー「たばこの煙の充満する部屋」(ここまで))を先に読んでいたために、真相に気づきやすかったのかもしれませんが……。

「農産物祭りの謎」
 サム・ホーソーンがタイムカプセルを掘り返すように主張したきっかけが、単なる勘違いだった、というオチは何ともいえません。犯人に肩入れするわけではありませんが、ほぼ完全犯罪といえるだけに、何とも惜しいものに思えてしまいます。

「古い樫の木の謎」
 “死んだふり”トリックは、J.D.カーのある短編((以下伏せ字)「暁の出来事」(『不可能犯罪捜査課』収録)(ここまで))でも使われているものです。が、やはりその使い方がお見事。

2002.05.17読了

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