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ハイヒールの死/C.ブランド

Death in High Heels/C.Brand

1941年発表 恩地三保子訳 ハヤカワ文庫HM57-4(早川書房)

 登場人物の大半が(それなりに)若い女性で、なおかつ大なり小なりベヴァンがちょっかいを出しているところまで共通しているので、識別しがたいのが難点です。特に後者は動機にも絡んでくるので、辛いところです。

 その動機に関する仕掛けは、なかなか面白いと思います。本書で描かれている大きな利益は、出世と恋の二つ。出世の勝者が敗者を殺すという構図は不可解です(しかも結果的には出世が不意になっています)し、冒頭ではミス・ドゥーンがフランスへの異動も色恋沙汰の障害にならないと述べている(16頁)こともあって、真相が見えにくくなっています。また、ミス・グレゴリイが好かれにくい性格であることが、間違い殺人というダミーの真相を誘発しているところも見逃せません。

 毒薬を入手する機会については、チャールズワースが示す真相が鮮やかなのは確かですが、いかんせん登場人物たちの配置や動きが複雑すぎて、すぐには納得しがたいところがあるのが残念です。また、よその薬局で買ってきたという真相は、個人的には秘密の抜け穴クラスの反則技に思えてしまい、やや釈然としないところがあります。

2005.07.08読了

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