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非在/鳥飼否宇

2002年発表 (角川書店)

 この作品には非常に多くの謎が盛り込まれていますが、中心となるのはやはり残された死体の謎でしょう。しかし、その謎を演出する骨の入れ換えのトリックは、死者が多いためにかなりわかりにくくなっている上、解明の手順が煩雑になっています。少なくとも、夏海やジンベーによる“誤った解決”は、すぐに否定されることが明らかなだけに、まったく不要なものではないでしょうか。

 もう一つ、人肉食という真相は、本来であればかなりのインパクトをもって提示されるはずのものだったと思うのですが、“仙人”(出射部長)の常軌を逸した語り、人魚のの筋肉”という台詞(206頁)、そして“焼け焦げた骨”という手がかりを組み合わせれば、容易に思いつくことができるようになっています。このあたりは非常にもったいないところです。

2002.12.24読了

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