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本格的 死人と狂人たち/鳥飼否宇

2003年発表 ミステリー・リーグ(原書房)
「第一講 変態」
 事件の真相については、犯人の珍妙なアリバイトリック(よりによってそんな時に……)こそ目につきますが、ミステリとしてはオーソドックスなものだといえるでしょう。この作品の特徴はやはり増田米尊という特異なキャラクターで、“天才科学者”へと変態した後の“解決”のインパクトは強烈です。設定からすると、ここで増田が見事に事件を解決するのが普通だと思いますが、読者の予想を裏切る外しっぷりが見事です。
 それにしても、最後の谷村警部補の姿が……。

「第二講 擬態」
 レポートの第8問「犯行に気づいた理由」の解答は、“mimicry”、すなわちミミが叫んだという強引なダジャレですが、“擬態といえばミミクリー、覚えておいて損はありません”(136頁)という上手のヒントを覚えていても、とても正解できるとは思えません。

「第三講 形態」
 勘のいい人ならば、スミダペットクリニックで“つのだてる”の名前のある靴下が見つかったところ(240頁)で、“アキラ院長”が犯人だと予想できるのではないでしょうか。ただ、犯人と被害者のつながりはほとんどなく(亜佳莉がペットクリニックを訪れた時にも、顔見知りらしい様子はありませんし)、この時点では動機がまったくわからない状態です。一方、捜査陣の方は被害者とのつながりをたどって犯人に到達します。つまり、作中の捜査陣にとってはフーダニットでありながら、読者にとってはホワイダニットになっているのです。この特殊な構成が、最後の暗合のインパクトを一層際立たせているといっていいでしょう。

「前期試験」・「補講 実態」
 正解は丸田教授でしょうか。

2005.02.05読了

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