凧をみる武士／泡坂妻夫

　一部の作品のみ。

「雛の宵宮」

　雛人形を倒すことによる謎掛けも面白いものですが、真の意味をごまかすために別の意味を持たせるというお咲とお定の企みもよくできています。ちょうど、ダイイングメッセージを改竄してミスディレクションとするようなものでしょうか。
　ただ、真相を見破った辰の作戦にはやや納得がいきません。たまたまお栄が忍を気に入ったからよかったようなものの……。

「幽霊大夫」

　宿木と香野右京の当人同士はいいかもしれませんが、紀の字屋をはじめ周囲は迷惑でしょう。恋とはそういうものかもしれませんが、あまりに自己中心的すぎるように感じられてしまいます。