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鳥居の赤兵衛/泡坂妻夫

2004年発表 (文藝春秋)
「鳥居の赤兵衛」
 最も印象に残ったのは、「蛙の青兵衛」でした(苦笑)。

「優曇華の銭」
 兄妹が銭独楽を受け取らない理由は、泡坂妻夫のファンならばすぐにピンとくるでしょう。

「黒田狐」
 鈴木利左衛門が黒幕であることは見え見えですが、その計画はよくできています。特に、盗みに入った仙松の使い方が非常に巧妙です。また、羽織の伏線も見事です。

「雪見船」
 いきなり暗号ミステリになってしまう展開が非常によくできています。暗号そのものも秀逸。

「駒込の馬」
 蹄の音という伏線が秀逸です。しかし、江戸の馬が藁の沓をはいていたというのは知りませんでした。

「毒にも薬」
 総右衛門本人が酒を“毒”と表現したというのは十分あり得ることです(こっそり買っていたという伏線もありますし)が、それはあくまでも可能性の一つにしかすぎず、決め手にはならないでしょう。すでに疑われながらも口を割らなかった鉄太郎が、簡単に白状するとは思えません。

「熊谷の馬」
 真相は、作者の初期の作品((以下伏せ字)「掌上の黄金仮面」(『亜愛一郎の狼狽』収録)(ここまで))のバリエーションといえます。逆向きに乗っていた理由が故事に基づくものだったところは面白いと思いますし、熊谷を舞台とする必然性もあります。ただ、(いくら聞かれなかったとはいえ)馬子がど忘れしていたというのはいただけません。

「十二月十四日」
 題名だけでもかなりのヒントになっているように思います。最後の地口(ダジャレ)にはやや脱力。

2004.08.16読了

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