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魔術ミステリ傑作選/O.ペンズラー編

Whodunit? Houdini?/edited by O.Penzler

1976年発表 中村能三 他訳 創元推理文庫170-1(東京創元社)

 一部の作品のみ。

「新透明人間」 (カーター・ディクスン)
 中心となるトリックは奇術を応用したもので、今となってはよく知られてしまっているでしょう。しかし、閉じられた(はずの)窓から銃弾が飛び出した謎を解決する手がかり(室温)はよくできています。また、“善意の目撃者”だったはずのロドマン氏の立場が逆転してしまうところも面白いと思います。

「この世の外から」 (クレイトン・ロースン)
 C.ディクスンの『爬虫類館の殺人』とは同じ状況でありながらまったく異なるトリックですが、奇しくもどちらの作品でも“音”が重要な要素となっているところが面白いと思います。

「時の主」 (ラファエル・サバチニ)
 カリオストロ伯爵がド・ゲメネ公爵に対して催眠術か何かを使った、という理解でいいのでしょうか。

「ジュリエットと奇術師」 (マニュエル・ペイロウ)
 犯人の方が一種の密室状況の中にいるというユニークなトリックです。しかし、かなり可能性が限定された状況であるだけに、狙い通りジュリエットを殺すことができたとしても、すぐに真相が見破られてしまいそうです。

「パリの一夜」 (ウォルター・B・ギブスン)
 絨毯の柔軟性を生かした壁抜けのトリックは面白いと思います。秘密の通路の一種ではありますが、その所在には意外性があり、非常によくできているのではないでしょうか。

「影」 (ベン・ヘクト)
 短い新聞記事の紹介で事件の顛末を明らかにしたラストは、何ともいえない余韻を残す秀逸なものです。

「決断の時」 (スタンリー・エリン)
 冷静に考えてみると、“空気は数時間もつ”と書かれているので(386頁)、レイモンの狂言である可能性が高いと思います。とはいえ、人命がかかっているとなると、なかなか決断は難しいでしょう。ヒュウの苦悩を見事に描き出すと同時に、結末を明らかにしないことで読者にもその苦悩を共有させる傑作です。

2001.06.22読了

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