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ジョン・ブラウンの死体/E.C.R.ロラック

John Brown's Body/E.C.R.Lorac

1938年発表 桐藤ゆき子訳 世界探偵小説全集18(国書刊行会)

 最終的な事件の構図自体は、比較的予測しやすいかもしれません。盗作疑惑からマンチャードが事件に関わっていることが予測できますし、“ヴェルラム”と名乗っている人物が犯人であることは明白ですから、さらにひねりを加えるとすれば、加害者と被害者が逆、すなわちヴェルラムがマンチャードを殺したのではなく、マンチャードがヴェルラムを殺してすり替わっているというパターンくらいしかないでしょう。

 ただ、マンチャードの動機が単なる作家としての嫉妬だけではなく、もっと根深いものだったという真相は、なかなか印象的です。この作品はホワイダニットと考えるべきなのかもしれません。

 マクドナルドの報告書に書かれた推理のプロセス(第18章)は、やや弱いようにも感じられるものの、よくできていると思います。

2002.07.25読了

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