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自来也忍法帖/山田風太郎 |
1965年発表 文春ネスコ(文藝春秋) |
“自来也”の正体については、阿波隼人の存在が一応ミスディレクションになっているとはいえ、やはり見え見えといわざるを得ません。中盤あたりの蟇丸の怪しげな行動が、石五郎に代わって“精水破”を受けたためだということは見当がつきますから、その石五郎こそが“自来也”であることは明らかです。 ……という風に考えていたのですが、中盤、“自来也”が自らの男根を切り落としたあたりで怪しくなってきます。“自来也”には明らかにヒーローとしての役割が与えられているにもかかわらず、あまりにも苛酷な仕打ちとしか思えないからです。他の風太郎忍法帖ならばあってもおかしくない展開といえるかもしれませんが、本書ではやはりそぐわないように感じられます。その違和感をすっきりと解決するのみならず、物語に深みを加えている、石五郎と蟇丸の“二人一役”という真相には脱帽です。 作中で実際に明らかにされるのは最後の最後ですが、少なくとも蟇丸が命を落とした時点で、石五郎が“自来也”であることはおそらく誰しも看破できるでしょう。あとはネタバレなしの感想にも書いた通り、「水戸黄門」的お約束の展開を安心して楽しむことができます。 風太郎忍法帖にしては珍しく、“ヒーローもの”らしい爽やかなハッピーエンドが印象的です。 2004.04.20読了 |
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