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忍法剣士伝/山田風太郎 |
1968年発表 角川文庫 緑356-38(角川書店) |
登場する十二名の剣豪たちのほとんどが本書より後の年代まで生き残っているという史実はもちろんのこと、旗姫争奪戦から効率的に脱落させていくという意味でも、命に別状ない程度の相討ちという結果の連続は必然といえます(勝敗が決してしまうと、例えば鐘巻自斎のように、敗者は命を落とさざるを得ないでしょう)。 この結果を演出し、なおかつ読者を飽きさせないための、剣豪たちの組合せが非常に巧妙です。“先手必勝”と“必殺のカウンター”という互いの得意戦術が拮抗する林崎甚助vs片山伯耆守。一転して、相手の弱点を探り合う心理戦の要素が加わる諸岡一羽vs富田勢源。特殊な武器が異彩を放つ上に、息子たちの因縁が影を落とす宮本無二斎vs吉岡拳法。同門の兄弟弟子の対決であり、仕官合戦からひいては政治的な様相も帯びる宝蔵院胤栄vs柳生石舟斎。唯一無二だったはずの師弟が、凄絶な戦いを繰り広げる鐘巻自斎vs伊藤弥五郎(十二名の中で唯一勝負に勝った伊藤弥五郎が、旗姫争奪戦から脱落する羽目になったのも、倒した相手が師匠だったからにほかなりません)。そして予想を大きく裏切る、上泉伊勢守と塚原卜伝の前代未聞の“力くらべ”は圧巻です。 しかもこれらの勝負がさらに、“忍者対剣士”という枠組みの中に収まっているところが秀逸です。飯綱七郎太としては剣士たちの共倒れによる全滅こそ望むところですし、旗姫を守る木造京馬としても相討ちによって追跡者を効率的に排除していくのが最善なのですから。その意味で、物語全体が非常にうまく構成されているというべきでしょう。 2004.05.30読了 |
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