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キッド・ピストルズの慢心/山口雅也

1995年発表 (講談社)
「キッド・ピストルズの慢心 ―キッド最初の事件―」
 「未来は、ない{ノー・フューチャー}……」というパンキッシュな台詞が事件の中心になっているところが、いかにもこのシリーズらしいというべきかもしれません。

「靴の中の死体 ―クリスマスの密室―」
 靴跡のトリックは古典的ですが、それが犯人特定の手がかりとなっているところが面白いと思います。そして、被害者が靴を履いていないことをごまかすための見立てが秀逸です。
 ただ、ジョージがすでに死んでいたことに気づかなかったことで、すべてが無理のあるものになってしまっているところがやや残念です。

「さらわれた幽霊」
 脅迫状からピンクの指紋が検出されるあたりは面白いと思います。しかも、それが犯人の特定につながっているところがよくできています。ただ、脅迫のために20年前の事件を再現するという構図には、やや物足りなさが感じられます。

「執事の血」
 作中で示された、貴族と執事のねじれた関係が印象的です。事件がまだ起こっていないという意味で異色の作品ですが、二段オチともいうべき結末がよくできています。

「ピンク・ベラドンナの改心 ―ボンデージ殺人事件―」
 犯人の特定の最終的な決め手は“不用意な一言”ですが、シュー・ギャグを使った犯行方法から女性に目をつけているところはなかなか面白いと思います。そして、“ジャックとジル”の童謡を、ジャック・ザ・リパーとジル・ザ・リパーに対応させたところが秀逸です。

2003.06.25再読了

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