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King and Joker/P.Dickinson

1976年発表 (Pantheon Books)

 まず〈ジョーカー〉の正体ですが、中盤で比較的あっさりと明らかになってしまったのはやや拍子抜けでした。もちろん証明されたわけではないのですが、ビクター2世の推測には説得力が感じられます。作者はマッギヴァンの死後に暗躍した第2の〈ジョーカー〉をミスディレクションとしたかったのかもしれませんが、真犯人がすべてを〈ジョーカー〉の仕業に見せかけるために後を引き継いでいるという構図は見え見えです。

 ところで、マッギヴァン殺しでは奇妙なアリバイトリックが使われています。ルイーズ王女がキヌヌと一緒にいる“マッギヴァン”を目撃したことで、犯行時刻が実際よりも遅く判断され、犯人のアリバイが成立することになったのです。しかしながら、マッギヴァンがビクター2世の影武者となり得るのであれば当然逆もまた成立するわけで、特にダーディの証言で時計が進んでいないことが明らかになってしまえば、ルイーズ王女が目撃した“マッギヴァン”はビクター2世であったとしか考えられないでしょう。

 しかしこの時点で、マッギヴァン殺害の動機を考えてみると、ルイーズが私生児であるという秘密を知られてしまった王室の人々が最も強い動機を持っているように思われます。このことが、一つのミスディレクションとして機能していると考えられます。さらに犯人自身が別の人物をスケープゴートに仕立てていることもあって、真犯人はうまく隠されているといえるのではないでしょうか。

2001.09.28読了

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