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プラットホームに吠える/霞 流一 |
2006年発表 カッパ・ノベルス(光文社) |
対向してプラットホームに入ってくる列車を向かい合う狛犬に見立てるところまでは納得できますが、さらにそこから垂直方向の“上り”と“下り”までいってしまうと、抽象的にすぎて狛犬の見立てととらえるのは難しいでしょう。むしろ、“上り”と“下り”はあくまでも“阿吽”の見立てであって、狛犬の見立てではないと考えた方がすっきりするかもしれません。つまり、“阿吽”という概念を狛犬とは違った形で表現したものといえるのではないでしょうか。 そしてその“阿吽”という概念が、武井から由比菜・咲江・久志・幸恵へと広まった結果、儀式としての見立てが氾濫することになったという真相がよくできていると思います。特に、“上り”と“下り”の高さを合わせるというこだわりは印象的で、武井殺しのトリックでは“上り”の途中で止めることができずに最上階まで行ってしまうため、咲江の方が“下り”の高さを合わせるためにマネキン人形を使ったという点が面白く感じられます。また、幸恵が久志と高さを合わせるために7階から飛び降りたことが決め手になっているのもよくできています。 事件の黒幕ともいえる久志が立てた“二重の交換犯罪”という計画は、やはり非常に秀逸です。交換殺人には最低限必要となる共犯者としての“信頼”を逆手に取り、自らは手を汚さないまま目的を達成するという計画は、悪魔のように巧妙だといえるかもしれません。しかし、実際には目的を達成するどころか事件が起きる前に死んでしまい、それでいて計画は予定通り最後まで進行していったという、何とも皮肉な結末が強く印象に残ります。
なお、作中で |
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