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くノ一忍法帖/山田風太郎

1961年発表 講談社ノベルススペシャル(講談社)

 当然のことながら、史実には豊臣秀頼の血筋が生き残ったという記録はありませんし、途中までの展開からみて、信濃女忍者たちは秀頼の子を産むことなく全滅という結末を予想していたのですが、由比正雪と丸橋忠弥、徳川頼宣らが登場する『柳生十兵衛死す』を読んだばかりだったにもかかわらず、迂闊にも完全にしてやられました。長曾我部盛親の女房・丸橋にも言及されていたのですが……。

 “男と女の戦い”の結末は、史実をみれば明らかに男(=家康)の勝利なのですが、それを鮮やかにひっくり返して女(=千姫)に勝利をもたらした作者の剛腕には脱帽です。そしてまた、少なくともこの時代には明らかに弱者であった女性に対して、作者が向けるある種の優しさが印象に残ります。

2003.09.20読了

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