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法の悲劇/C.ヘアーTragedy at Law/C.Hare |
1954年発表 宇野利泰訳 ハヤカワ文庫HM60-1(早川書房) |
この作品におけるミスディレクションの一つは、バーバー判事(夫妻)に対する複数の悪意です。すなわち、かつてバーバー判事に厳しい判決を受けたヘッペンストール、ピアニストのシーボルド・スミスを挟んでヒルダに敵意を燃やすサリー・パースンズ、そしてヒルダとそりが合わない書記官のビーミッシュの存在です。これらが複合して判事を襲うことにより、真相がつかみにくくなっています。 そして、もう一つのミスディレクションは、判事が自殺未遂を図った時のヒルダの献身的な介護です。これによって、ヒルダは判事に死なれては困るのだということが強く印象づけられ、読者の疑惑の目をそらすことに成功しています。 この不可解な状況を解き明かす真相、つまりヒルダの動機は非常によくできたものだと思いますし、その鍵が判例という形で示されるのも、徹頭徹尾裁判にこだわったこの作品らしいといえるでしょう。 2001.05.13読了 |
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